意見書・申し入れ、議員団活動 2023年分



1月27日、熊本市へ「渋滞を解消し、人と環境にやさしい交通・道路づくりを」の提言を熊本市へ申入れました。

「渋滞を解消し、人と環境にやさしい交通・道路づくりを」の全文 ダウンロードはこちら(PDFファイル 517 KB)

 熊本県知事 蒲島郁夫様
 熊本市長  大西一史様
 2023年1月27日
 渋滞を解消し、人と環境にやさしい交通・道路づくりを
  巨額のムダづかい、都市高速道路は中止を

 日本共産党熊本県委員会委員長 松岡勝
 日本共産党熊本地区委員会委員長 重松孝文

 1,熊本市の交通・道路政策の最優先課題は渋滞の解消
 熊本市は、交通渋滞ワースト1位です(三大都市圏を除く政令市)。渋滞解消は喫緊の課題です。都市高速道路計画は20年先のことであり喫緊の課題である渋滞解消にはなりません。
 日本共産党は、渋滞を解消し便利な交通へ、以下の5つの対策を提案します。
 ①自転車の活用促進
 ②公共交通(電車・バス)を軸にした交通体系の拡充
 ③交差点の改良
 ④熊本市街地への車の流入の抑制、無料のパークアンドライド設置
 ⑤時差出勤を積極的、計画的に推進する
 
 ①自転車の活用促進
 身近な交通手段である自転車は、自動車への依存度を減らし、結果として交通混雑を減らします。健康増進の効果、温室効果ガスを発生せず気候危機の打開、コロナ禍のもとで、通勤・通学時の「密」を避けるなど様々な効果があります。
 ・自動車優先の道路整備を改め、歩道の整備とともに、自転車専用通行帯、自転車道、自転車歩行者専用道路「ちゃりんぽ道」などの整備を推進する。
 ・無料の駐輪場を整備する。
 ・学校における自転車活用と交通安全教育をすすめる。
 ・ヘルメット着用推進のためのヘルメット購入費への助成を行う。
 ・シェアサイクル事業を拡充する。
 ・政府推進の「自転車通勤推進企業宣言プロジェクト」を周知徹底する。
 
 ②公共交通(電車・バス)を軸にした交通体系の拡充
 ・桜町再開発ビル開業に合わせた市電・バスの運賃無料、昨年11月にはバス・市電100円乗車の取り組みで、サクラマチデータプロジェクトの報告によると、電車バスの利用増による経済波及効果は中心市街地だけでも11億4,000万円、CO2削減量は91トンと、経済・環境の両面での大きな効果が示されています。熊本市が支援し、無料もしくは100円のワンコイン乗車等、官民一体での公共交通の利用促進の取り組みをすすめる。
 ・市電の延伸を改めて検討し推進する。
 ・民間になったバス事業について、「便数が減った」、「区役所に行けない」、「バス停が遠くてバスに乗れない」などの声が寄せられています。政令市移行時の区役所への区バス運行がなくなりました。2015年から2020年までの5年間で、熊本市の路線バスによる輸送人員は約36%減少、走行キロ数も減便を含めて約22%減少と報告されています。新型コロナの影響もありますが、路線バスの走行キロの大幅減少や減便は重大です。
 高齢化や環境への対応として、公共交通の利便性向上が必要です。バス路線の拡充、公共施設・医療機関等とのアクセス向上、特に政令市移行時の約束である区役所へのアクセス・区バスの運行、南熊本復興住宅から市役所、長嶺・託麻方面から東区役所方面へのバス路線の開設等をはかるべきです。
 ・おでかけICカードの負担増はやめ障害者は無料にする。
 ・バスの民間異存を改め、路線の拡充を利用者目線で検討し推進すること。環状路線の抜本的拡充、廃止路線の復活、コミュニティバス・フィーダーバスを組み合わせた郊外部の交通不便の改善等をすすめる。
 
 ③交差点の改良
 県・熊本市に現存するデータを元に「交差点」の全面的調査を実施し、渋滞解消のための「交差点計画」を策定する。交通渋滞の大きな要因になっている主要交差点(保田窪・神水)の立体交差をはじめ左右折専用車線、隅切り新設などを細かく推進する。
 
 ④無料(実質無料)のパークアンドライドの設置
 パークアンドライド(都心部への自動車の流入を減らすために自動車を駐車し、そこから電車、バス、路面電車などの公共交通機関や自転車を利用する)を無料(実質無料)で効果的に設置し、車の市街地への流入の抑制、自転車、電車、バスへの利用に誘導する。
 
 ⑤時差出勤の推進
 渋滞が集中する朝夕の時間帯の時差出勤を企業の合意をはかり実施する必要があります。時差出勤は渋滞解消に確実に効果があります。実現に至るためには、企業(場合によっては労働組合も)の納得・合意が不可欠です。民間の合意と協力をえるうえでは県庁・市役所が率先して実施しながら、民間の検討・具体化を支援していく。
 
 2,都市高速―渋滞解消にならず、莫大な費用投入、赤字道路
 ①計画期間は20年~30年。
 インターチェンジや空港へのアクセスとして3本の「都市高速整備」(10分20分構想)が検討・具体化されつつあります。この計画は、熊本県・市が策定した「熊本県新広域道路交通計画」に位置付けられ、計画期間は20~30年です。喫緊の課題である渋滞解消には役立ちません。
 
 ②3,000~4,000億円の事業費、しかも赤字
 福岡北九州都市高速(1日25万台以上が利用)は、延長110㎞、総事業費1兆3、000億円、40年間の償還率46%、償還対象額の半分も償還していません。1日25万台以上が利用している都市高速がこういう状況です。熊本の「10分20分構想」は、熊本都市圏の北連絡道路・南連絡道路・空港連絡道路、合わせて約30㎞が計画区間です。福岡北九州都市高速を参考にするならば、3,000億円から4,000億円の事業費が想定されます。熊本市が多額の費用をかけ整備している西環状道路は、開通部分の利用が1日7,600台です。 
 熊本空港利用者は、コロナの影響がないときでも1日9千数百人です。乗り合わせやバス利用もあるので、9,000台が空港へは行くことはありません。しかも、県は、大津~空港間の「空港のアクセス鉄道計画」を進めています。幾重にも無謀・無駄な「都市高速計画」は中止すべきです。
 熊本県・熊本市が大型開発優先をあらため、安全、便利、身近な道路・交通対策を急いで推進することを強く求めます。
 
 3,求められる道路・交通政策の転換
 ① クルマ優先から人と環境にやさしい地域交通へ
 高度経済成長期以来、自民党政権のもとで進められてきたモータリゼーション推進、自動車優先・道路偏重の交通施策が、交通事故や騒音・振動・大気汚染などの道路公害の多発、公共交通の衰退をもたらしてきました。気候危機が重大化するなかCO2を排出する自動車中心の道路・交通から、自転車、公営交通を軸にした人と環境にやさしい道路・交通への転換を積極的にすすめることが必要です。
 
 ② 公営交通の縮小・廃止から、
 憲法に基づく「移動の権利」保障する交通へ
 交通・移動の権利は、日本国憲法が保障した居住・移転の自由(第22条)、生存権(第25条)、幸福追求権(第13条)など関連する人権を集合した新しい人権です。国民が安心して豊かな生活と人生を享受するために行政は、交通・移動の権利が保障され、行使できる環境を整える責任があります。
 市電4路線が廃止され、最近では市営バスが廃止され、「上下分離方式」ということで運転士に雇用の民営化が計画されています。市電延伸計画は、自衛隊ルート、産業道路ルート、南熊本駅ルートが自衛隊ルートに絞られ、それさえも事実上中断状態です。
 地域公共交通を、維持、改善拡充することは、事業者だけでは困難です。国民・住民の「交通・移動の権利」を保障するために行政(市・県・国)が財政援助も含めて責任をもってあたるべきです。
 
 ③ 安全性を高める交通・道路政策
 ・交通死亡事故のうち、歩行者は35.7%、自転車乗用中が13.7%で死者数の半数を占めている(2021年全国)。生活道路(車道幅員5.5メートル未満の道路)における交通死傷事故は、年間8万件(2020年全国)にのぼり、多くは小学生・高齢者です。
 生活道路の安全確保のため、自動車優先から歩行者優先の道路交通政策への切り替えが必要です。
 ・生活道路での交通事故をなくすには、生活エリア内への通行車両の抑制、速度抑制する。
 ・衝突時に時速30kmを超えると歩行者が致命傷を負う確率が急激に高まります。生活空間内での交通量と速度を抑制し歩行空間を確保するために政府が推進する「ゾーン30」の設置や歩道の整備や車の走行路にはデコボコをつけて自動車の速度を落とさせる「ハンプ」等の対策を進める必要があります。
 
 ④高齢者が自ら運転しなくてもいい環境の整備
 高齢ドライバーによる痛ましい事故が相次いでいます。人口の高齢化に伴い、運転免許を保有する75歳以上の高齢者は増加しています。自動車優先で鉄道やバス、タクシーなど地域の公共交通の路線廃止や縮小がすすみ高齢者が運転せざるをえない状況が問題です。
  高齢運転者の事故防止対策の要は、高齢者が運転しなくても移動できる環境、交通手段を整えることです。
 ・高齢者が支障なく日常生活を送れるよう、地域循環バス、オンデマンド交通、乗合タクシー、福祉タクシーなど地域公共交通網の整備を最優先してすすめる。「衝突被害軽減ブレーキ」やペダル踏み間違い防止対策など安全運転支援システムの購入への支援をはかる。
 
 4,市民の声をあげ、力を合わせて 
 人と環境にやさしい交通・道路づくり
 ①市電(2号線・3号線)廃止計画を中止させた市議会論戦と市民運動
 1970年代、星子敏雄市長は、市電(2号線・3号線)の廃止計画を明らかにしました。日本共産党市議団は、「市電南熊本線・川尻線・子飼線・広町線を廃止しモータリーゼーション(自動車化)を促進した結果、全国有数の渋滞と排気ガスによる大気汚染をもたらした。大量輸送機関(市電・バス)を軸にした交通網の整備が必要」と市長を追及しました。「市電廃止」の情報を知った市民が立ち上がり「市電を守る会」がつくられ、「電車」「都市交通」の専門家を招いての学習会、宣伝、署名運動が展開されました。市長がついに「市電廃止計画」を撤回し、2号線・3号線は残り、今も運航しています。 
 日本共産党は「市電廃止に反対すると同時に、京都市・大阪市・名古屋市・仙台市・鳥取市などを視察し研究を重ね、以下のような市電存続のための提案をはじめ熊本市の交通の在り方への建設的な提案を行いました。
 ・市電の利便性を向上させ赤字解消のために、スピードアップ・定時運行を確保する(当時は電車軌道に車が乗り入れ、車も電車も渋滞という状況があった)。そのために、軌道と自動車道を分離(軌道運行禁止)し、電車が信号以外では停止することなく運航できる。
 ・電停を改善する。幅や長さの確保、可能な限り屋根を付ける。
 ・バスのスピードアップ、定時運動のためにバス専用レーンを全面的に設置する。
 ・豊肥線を市内交通に組み込む。そのために駅の改善、新設、立体交差。
 ・低床電車の導入
 これらは実現し、市電の赤字解消、渋滞と排気ガスの排出の改善に一定の役割を果たしています。
 ②市民の力で市電廃止を撤回させ、2号線、3号線は存続し、低床車両の導入、バリアフリー化などを進め、市民に愛用され、全国的にも注目されてきました。以来、年月が経ち熊本市の交通と道路をめぐる状況は深刻、重大な事態に直面しています。
  日本共産党熊本県委員会・同熊本地区委員会として、現状を打開し改善を進めるために、提言「渋滞を解消し、人と環境にやさしい交通・道路づくりを
  巨額のムダづかい、都市高速道路は中止を」を示し、市民の皆さん、関係者の皆さんのご検討と事態解決のための共同を呼びかけるものです。


連絡先

・日本共産党熊本市議団 熊本市中央区手取本町1-1 議会棟3階
電話 328-2656   FAX 359-5047
メール: kumamsu@gamma.ocn.ne.jp
ホームページ https://www.jcp-kumamoto.com/