2017年12月21日
熊本市議会議長 澤田 昌作 様
日本共産党熊本市議団
上野 美恵子
那須 円
山部 洋史
子育て・介護等を応援できる市議会となることを求める申し入れ(PDFファイル 451KB)
1、議会への乳児同伴が投げかけた問題
緒方議員の議場に子どもを連れて出席を求めた問題が大きな反響を広げています。緒方議員の主張と議会の対応が実際の経過ぬきに伝えられたことが混乱をひろげています。
@ 緒方議員は、「子どもを3歳まで母乳で育てたい。そのために議会に子ども連れて来たい、ベビーシッター代を公費で負担してほしい」ということを議会事務局に一度だけ話していました。そのような経過の後、子どもを抱いて本会議に出席したというものです。
緒方議員が本会議後の記者会見では「子育てと仕事を両立している女性たちが直面している問題を体現したかった」と発言したことで、問題が仕事と子育ての両立の困難、とりわけ国会でも地方議会でも女性議員の比率が世界でも最も低い日本社会の遅れとしてとりあげられてきました。
A 子育てをかかえる女性議員の活動への条件や環境の整備などは遅れています。全国市町村会議長会が議会の標準規則にそれまで出産は「事故」あつかいだったものを「出産」を理由に欠席できる規定を明記したのは2015年です。
同時に、個別の自治体では女性議員の問題提起と議会の合意で改善もすすんでいます。
沖縄北谷町議会では日本共産党宮里歩町議が妊娠中に議会事務局に相談し、議会運営委員会と全体協議会での審議のうえで、議場と同じ階にある議員用控室を保育スペースとして提供をうけ、議会出席の際に活用し、ベビーシッターは町の育児援助制度を利用して手配しています。長野・松本市議会では議場入口横に託児所があり、議員でも傍聴する市民でもそこに預けることができます。また、女性も男性も子育てにかかわる時代に、保育園にお迎えができるよう開会時間を早め、終わり時間を繰り上げた議会もあります。東京都議会は12月議会で会議規則を改正し、子どもの介護や親の介護などを理由に欠席できるよう「家族の弔事、家族の看護または介護、配偶者の出産補助」と明文化し、幅広い世代が政治に参加しやすい環境を整えるとしています。市民から選ばれた議員としてその役割と責任を果たすために、市民とともに見直しをすすめていくことは必要です。
B 議場に子どもを同伴することについては考えるべき問題があるのではないでしょうか。議会は市民の負託を受けて市民生活のすべての問題を審議し議決する機関です。子どもに気が取られるなら審議に集中できないし、また子どもを2時間議場に同伴することが子どもにとって最良の選択とはならないでしょう。働く女性たちは、職場に子ども同伴することで子育ての両立を求めているわけではありません。保育所に預け、子どもによりよい保育環境を求めつづけ、母乳保育を保障する取り組みも行われています。子どもに最善の環境をどう保障するかの立場で解決をすすめることが大切であると考えます。
2、熊本市議会の対応について
今回の議会の対応について、「議会事務局と市議会に何度も相談したが、全く対応してもらえなかった」という報道がされています。実際には、議会運営委員会に事務局から報告された説明は「一度、雑談のような感じで『子どもを3歳まで母乳で育てたい、議会に子どもを連れてきたい』『ベビーシッター代を公費で負担してほしい』という話だったので、『議員だけが公費でベビーシッターを雇うというのは市民の理解が得られない。事務局でどうこう出来るという問題ではないので、議員に働きかけるように』伝えた」ということです。事前に議長や議会運営委員会、各会派、そして同僚の女性議員にも相談がないままに、突然、議場への乳児同伴という行動が実行されたことに戸惑い、議場が混乱する事態となったというものです。
熊本市議会はこれまでも緒方議員の活動で、視察の際に「子どもと同じホテルで宿泊する」ことに配慮しました。出産を控えていた今年3月の一般質問の際には、通常は起立して行う質問を体調を考慮し、着席したまま質問できるようにしていました。
私たち議員は、議会で定めた「ルール」を守ることは大前提です。規則に定めていない問題が生じたときには、議会のルールづくりの合意の場となる議会運営委員会にはかって対応するのが基本です。熊本市議会では、少数意見を尊重する議会制民主主義の立場にたって、一人会派の意見であっても、議会運営委員会で同意があれば発言する機会が与えられてきました。
日本共産党市議団は、働きながら子育てで苦労している市民や子育てをしている議員を応援する市議会としての役割を果たすように奮闘する決意です。
3、働きながら子育てできる社会的条件、環境の整備を
今回の問題が報道されるなかで、毎日の生活で子育てしながら働き、悩みや困難を抱えている多くの女性からさまざまな意見が寄せられました。こうした問題の解決に熊本市議会が正面からとりくんでこそ、今後に生きる“問題提起”となるものです。
熊本県は、働く女性が多い一方で、妊娠・出産を機に退職する女性も少なくなく、子育てと仕事を続けようとするときに、保育所入所の壁にぶつかっています。
熊本市では、今年4月に保育所入所を希望した児童が20,762人、入所できたのは20,389人、希望する保育所に入所できなかった子どもが373人(市は保留児としている)となりました。働く女性が増え、毎年、保育所入所希望が増加していますが、市は公立の保育園をつくらず、民間の地域型保育事業で肩代わりさせてきました。その結果、3歳以上の保育の受け皿がなく、あらたな待機児を生む状況にあります。規制緩和と詰め込みでは子どもの安全も豊かな発達も保障されず、保育士への負担・労働強化を深刻にしています。
また、熊本市は認可外施設の比重が高く、1600人(72施設)の子どもが保育されています。こうした施設と児童に対して十分な保育環境や保育士の処遇を保障する補助制度の拡充が強く求められてきています。
そして、多くの市民が願っているのは、だれもが安心して子育てできる環境です。子どもを連れて歩くときに、施設や道路、交通でのバリアフリーや授乳の場も十分ではありません。子育てで疲れたときにホッとでき、子育てを気軽に相談できる窓口など、行政が市民の声を聴きながら改善し、願いに応えて実現すべき課題はたくさんあります。
日本共産党市議団は市民のみなさんと力をあわせ、一つひとつ実現に向けて奮闘する決意です。
よって、日本共産党市議団として、以下の点を要望いたします。
1、子育てや介護に携わりながら、市民の負託を受けた議員としての職責が十分に果たしていけるよう、議会のルール改善の検討を行うこと
2、議会のルールづくりは、市民の理解を得ながら、働き子どもを養育する人、介護に携わる労働者に共通の課題として検討していくこと
以上