2016年12月6日 日本共産党熊本市議団 山部博史
12月議会一般質問 山部博史(PDFファイル 616KB)
日本共産党熊本市議団の山部洋史です。
■熊本地震について
熊本地震の発災から8カ月が経とうとしています。この間、避難所や市の災害対策本部が閉鎖、応急仮設・みなし仮設住宅への入居も進み、また先日ボランティアセンターも受け付け終了の方針が出されるなど、ある一面、熊本地震の震災対応については、すこしずつ落ち着きを見せているかのように見えます。しかし、被害の復旧・復興はまだ緒に就いたところで、被災者の住まいや生活・生業の再建は遅れています。日常生活を早く取り戻せるよう、支援の強化を本格的に進めて行かなければなりません。
熊本地震の本市での犠牲者は60名。直接地震によるものが4名であるのに対し、その後の震災関連死は54名にのぼります。県下他市町村の関連死が一ケタ台であるのに対して、本市がこの数字になっているのは、むろん人口の割合によるものではありますが、いっぽうで全県の平均に比べると、高い割合で関連死が起こっているのも現状です。また6月豪雨の土砂災害でなくなった方も2名いらっしゃいます。こうして、せっかく地震の難から逃れられた命が、過酷な避難所生活や車中泊による体調の悪化、また度重なる余震で緩んだ地盤がもたらした二次災害によって奪われてしまったことは、痛恨の極みではないでしょうか。
行政として何とか救えなかったものか、個別に精査、検証して今後の対策に活かす必要があります。
また、本市の住宅被害は、11万2千件。応急仮設住宅、みなし仮設住宅など、約7200戸が整備されましたが、今後は避難者への個別の対策が重要になってきます。とくに世帯単体でちらばって点在する、みなし仮設住宅は、被災者間のつながりが薄れ孤立化の心配があります。丁寧な見守り支援が、これから重要になってきます。また仮設住宅の入居期限である2年後を見据えれば、災害公営住宅の整備も急務です。
このように被災者の住まい・生活の再建への取り組みは待ったなしの状況です。
いっぽうで、これまでの本市の被災者支援の取組みは、ともすれば既存の制度の枠内に、被災者をはめ込んでいくようなきらいがありました。しかし、これからはそうはいきません。今後復旧再建の過程で起こりうる事態は、多様化、複雑化していくでしょうし、被災者ひとり一人の事情に寄りそった、丁寧な支援がこれまで以上に重要になってきます。そのうえで必要な措置については、新たに制度を創設するなど、より積極的な行政の関与が必要になってくるでしょう。
この間、わたしたち日本共産党熊本市議団は、全市的なアンケート調査をはじめ、仮設団地や、地域訪問を続けるなかで、被災者お一人お一人の声を拾い上げ、それを元に市への申し入れ、また党国会議員団の協力のもと、政府交渉などで、改善を求めてきました。
今回は、こうした声を元に、震災から8カ月、今も住まいの確保や生活再建への苦闘を続ける市民にたいして、復旧・復興に何が求められているかをしっかりと見つめるとともに、そのためには、これまでの熊本地震での教訓をしっかりと活かすこと、震災対応について何が問題だったのか、またそれが検証、改善され次につながるものへとなっているかを問うていく必要があると思います。その点をふまえて、質問させていただきます。
まず、冬を迎える被災者の支援について、3点お尋ねします。
・仮設、みなし仮設への暖房器具などの寒さ対策について
応急仮設住宅では、ひと世帯につきエアコンが一台、入居者の負担なしで
設置してあります。しかし、部屋が間仕切られている関係上、実質、一世帯で一部屋しか利用できない状態にあります。また、みなし仮設、市営住宅ではそもそもエアコンの設置はなく、入居者の自己負担となっています。
発災から8カ月、避難所生活から脱して、仮の住まいを得たとはいえ、なかには新しい環境になじめず、ともすれば家にこもりがちになる方もいらっしゃるかもしれません。これから寒さが厳しくなる折、これまでの疲労やストレスから体調を崩される方が増えてくると思います。この時期何と言っても体の冷えが体調を崩す一番の原因です。
エアコンが配備されている応急仮設住宅でも、夏の暑さの折は、エアコンのない部屋では熱中症寸前の症状になり、極めて不十分だった、との声も寄せられていました。
ついては、エアコンのない、みなし仮設や市営住宅はもとより、応急仮設住宅についても、エアコンや暖房器具の設置し、寒さ対策に万全を期すべきと考えますが、いかがでしょうか。
・みなし仮設世帯への物置の提供について
仮設住宅ではその間取りの狭さから、荷物が収納できないと、倉庫設置の要望がたくさん寄せられていました。今回、応急仮設住宅への設置予算が提案され、仮設住宅のすべての入居世帯に、倉庫が設置されることになりました。
しかし、民間借上げのみなし仮設住宅では、設置の予定がありません。みなし仮設の入居者からも「アパートが狭くて荷物が置けない」などの訴えが寄せられています。
いっぽうで、みなし仮設住宅では、既存のアパート等を提供してもらう関係上、敷地に倉庫設置スペースが取れない物件もあります。
ついては、みなし仮設物件については、民間の貸倉庫等を借りる費用の補助・支援をするべきだと考えますがいかがでしょうか。
・仮設・みなし仮設入居者への見守り、支援について
避難所も閉鎖になったいま、必要になってくるのが、仮設団地、みなし仮設の入居者への見守り、援助です。
仮設団地、みなし仮設、市営住宅の入居戸数は6,869戸。しかし世帯把握の基礎となる聞き取り調査が、まだ全世帯訪問に至っていません。11月1日からは、看護師40名を各区に振り分けて派遣、20班で訪問・見守りを実施しています。
これから冬場に向けて、寒冷が進むとこれまでの避難生活で蓄積した疲労が重なり、インフルエンザやさまざまな感染症など、病気のリスクが高くなることが考えられます。専門的な保健師などによる、いままで以上の丁寧な見守りが必要だと思われます。
現在行われている、看護師、区職員40名による訪問、見回りの他に、各分野の専門性の高い職員や、民間団体等の支援を仰ぐなどの取組みで相談、見守り支援の強化については、具体的な手立ては考えていらっしゃいますか。
以上3点、政策局長におたずねします。
(答弁)
(返し)
・暖房器具について
応急仮設住宅には、私も何度となく聞き取りなどで伺いましたが、その間取りは玄関を開けると、いきなり台所というレイアウトになっています。人の出入り等で、風が吹き込む場所である上に、炊事や水回りの仕事でたださえ、体が冷えやすく、長時間の立ち仕事をする場所です。そうした所に全く暖房の設備がないというのは、いかがなものでしょうか。
半壊、それ以上の被害の世帯には、義援金、生活再建支援金の支給があるので、それでまかなって欲しいとのことですが、言うまでもなく、こうした世帯の皆さんは、今後の住まいの再建の為に、膨大な費用を要する方々です。そうした皆さんの再建の足掛かりとなる住宅については、可能な限りのオプションをつけることで支援すべきだと思います。
・みなし仮設の倉庫設置について
またみなし仮設への倉庫設置については、既存の住宅を借り上げることから、設置スペースの確保が困難なこと、また避難者以外の他の住民との公平性の点からも設置できないとのことですが、そうであるならば、応急仮設住宅への倉庫を設置とのバランスの問題を一方では、考えなければならないのではないでしょうか。
自治体の都合で、応急仮設ではなく、民間住宅に入居してもらうのですから、貸倉庫の費用の援助等の支援をぜひやって頂きたいと思います。
・見守り支援の強化
・見守り支援の強化については、各区に「地域支え合いセンター」、個別支援会議を設置し、行政のみならず、関係団体との連携のもと、支援に努めるとのことでした。しかし、いっぽうで支援の前提となる、各世帯の訪問調査がまだ完了していない、という現状でもあります。まず、この訪問・聞き取り調査が速やかに完了されるよう、人員、体制の拡充を求めます。先日の新聞報道でも、自宅避難やみなし仮設避難者の「支援格差」の問題が指摘されていました。「孤立化」「孤独死」は過去の震災で繰り返し経験されてきた痛ましい教訓です。被災者、ひとり一人状況に応じた支援のためにも、まずは全世帯の聞き取り訪問を求めます。
・一部損壊世帯への支援
熊本地震の特徴は何と言っても、膨大かつ甚大な住宅被害です。
熊本地震での本市の住家被害は、11月28日現在、総数111,987件、うち全壊が5,616件、大規模半壊が8,615件、半壊が3,370件、一部損壊が64,386件となっています。市の試算では、被害総額、1兆6,362億円のうち、住宅被害は、1兆2,121億円で、全体の74%を占める額になっています。
住宅の再建には多額の費用を要します。しかし、今回の熊本地震でその再建を阻んでいるものは、住宅の損壊判定により支援に差があることです。こと、一部損壊世帯への支援がないことは、震災発災当初から問題になっていました。
先ほどの住宅被害の試算から宅地を除いた住家、家財の被害額、1兆1,689億円のうち、一部損壊世帯の被害額は7,415億円にものぼり、全体の63%をも占めています。ここに支援がないのです。
政府は、一部損壊の扱いについて「差し当たり日常生活に支障のない範囲の損害である」との立場から、生活再建支援金や、応急修理制度の対象にもしていません。しかし、そのことが熊本地震の被害の実態に全く即していないことは、明白です。
私たち共産党市議団が全市的に行ったアンケート調査でも、回答が寄せられた720件のうち、一部損壊が266件と全体の37%をしめました。かかった費用の内訳をみると、修理費100万円以上というお宅が113件で42%ありました。うち、300万円以上のところが36件で31%、さらになんと1,000万円以上かかると答えられたお宅も5件(4%)ありました。
このように一部損壊の被害の実態が、「差し当たり日常生活に支障のない範囲の損害」などといえるものではないことは明らかです。
こうしたなか、熊本県と市町村は10月、一部損壊世帯に対して、一定の条件を満たした場合、義援金を支給することを確認、配分については、修理費が100万円以上かかった世帯に一律10万円を支給する方針が出されました。
しかし、これはあくまで義援金の配分であって、行政が独自に手当をするものではないという点では、依然変わりません。義援金が、全国から寄せられた善意の見舞金であるということを考えれば、今まで一部損壊に線引きをし、その支給をしてこなかったことこそが問題です。今回の支援決定については、一歩前進ともいえるかもしれませんが、余りにも遅きに失したといわざるを得ません。
また、支給に際して修理費100万円以上の世帯という新たな線引きをしていることも問題です。これまで、半壊以上の世帯には一律支援をしてきたものを、一部損壊に限っては、なぜこのような線引きをしなければならないのか。
「一部損壊は切り捨ての為の制度」、「あたかも自分は被災者ではないとの烙印を押されているような気持ちになる」とこれまで、切ない思いをされてきた一部損壊の皆さんの声を聞いてきました。しかし、これではそうした人たちの中に、また新たな分断を生むだけです。100万円以下の世帯にも、切り捨てをせず一定額の支給をする必要があるのではないでしょうか。
また先ほど、一部損壊であっても、改修費用に数百万、中には1,000万円を要するお宅があったことを紹介しました。そうした実態に対して、義援金の支給が10万円というのは、余りにも少なすぎます。現在でも、一部損壊には行政の責任による支援はされていないのですから、今回の義援金支給で終わらせるのではなく、住民の生活再建を保証する責任がある立場として、自治体独自の支援制度に踏み出す必要があります。実際、県下市町村では、厳しい財政状況ながらも、早い段階で独自に支援に踏み出したところがあります。復興重点プロジェクトの第1に、「一人ひとりの暮らしを支えるプロジェクト」を掲げる本市であれば、この点は決して避けて通れないところです。
そこで市長にお尋ねします。
一部損壊世帯への支援のあり方について、義援金の支給対象を「100万円以下」で切り捨てず、本市に寄せられた義援金の中からでも一定額の支給をする必要があると思いますが、いかがでしょうか。
また、義援金支給で終わりにするのではなく、本市による支援制度を新たに創設し、そのための財政措置を市長の責任で国にしっかりと求めて行くべきだと思いますがいかがでしょうか。発災から8カ月です。従来の「県と協力して国に要望してまいる」ではない、市長の具体的な取り組みへの決意をお聞かせください。
続いて、地盤被害についてお尋ねします。
国から調査の予算が入って、市内各地で調査に向けた住民説明会が開かれています。宅地液状化防止事業、大規模盛土造成地活動崩落防止事業などの適用で着手される見込みです。国の補助率が四分の一から、熊本地震対応で二分の一にかさ上げされましたが、それでも自治体負担があることには変わりありません。
説明会の場においても、民有地なのでどうしても所有者の負担は生じる、との説明がなされていました。
当該地域の住民の声を聞けば、住宅の補修だけで既に数百万かかっており、宅地補修まで費用がまわらない。しかし、地域全体で面で取り組まなければならない事業であり、自分だけやりたくないというわけにいかない。困っている、との声です。
造成地の滑動崩落は、今回の地震により発生したもので、甚大な規模で発生した災害対策として実施されるものであり、国が費用の全額、若しくは大部分を補うことは当然だと考えます。
そこでお尋ねします。
現時点で、宅地被害について、住民負担の割合については、どうお考えですか。また、住民負担について、限りなくゼロに近づけることが必要だと思いますが、具体的に自治体として、地域住民をどう支援していくのかお聞かせください。
くわえて、液状化被害についても、公共事業として多額の費用が生じることから、国に対してどういった支援を要望していかれますか。
また、そのうえで自治体の裁量度合いが高い支援をおこなうことが必要だと考えます。公共事業としての国に対する要望内容とその他の支援策について、本市としてどういう取り組みをしていかれるのか、お聞かせ下さい。
以上の2点につきまして、市長並びに、都市建設局長におたずねします。
(答弁)
(返し)
本市、独自の新たな支援制度については、被災者アンケート結果を踏まえながら、新年度予算のなかでお示しいただく、とのことでした。
支援の中身については、様々な費用の補助、助成等の支援か、相談窓口の設置等の支援なのか、現時点で定かではありませんが、被災者の皆さんにとっては、何といっても生活・住まいの復旧、再建に困っている現状ですので、なにがしかの費用による支援を是非願いしたいとお思います。
(返し)
地盤被害、特に液状化被害では、復旧費用の住民負担が大きな足かせになっています。東日本大震災でも発災から5年以上、液状化被害については、やっとこれからという現状です。先日の新聞報道にもありましたが、東日本大震災の際、千葉県浦安市では、補助金を使っても、1戸当たり200万円程度の住民負担が必要となり、事業の対象世帯、約4100戸のうちの9割で合意が得られず、計画を断念したそうです。
一番の解決方法として、住民の負担を極力求めない、最小限に留める必要があります。一方で住民が求める生活再建のスピードに支援制度が追い付かない現状もあり、公共事業以外の復旧支援策も視野に入れ、県との早急な協議が求められます。
そのことを指摘して次の質問に移ります。
・災害公営住宅について
今議会の補正で災害公営住宅の予算が提案されています。
現在100戸、そして今後50戸が建設予定です。いっぽうで、入居希望数は全体で480戸あり、不足分の330戸は既存の市営住宅を充てることになっています。
しかしそのことにより、本来市営住宅の入居を希望されていた一般の方に、住宅が供給できない事態が生まれています。
私たちがおこなった震災アンケートに寄せられた声でも、
「子ども3人の母子家庭です。市営住宅に申し込もうと思っていた矢先に地震があり、団地は被災された方が優先のため申し込みすらできない状況です。この先いつ募集があるか先が見えません。そんな母子家庭はたくさんあると思います。」との訴えが寄せられました。
仮設団地、みなし仮設の入居期限があるなか、災害公営住宅の整備は急務です。一般の入居希望者に住宅が供給できないような、市営住宅を代替するやり方ではなく、災害公営住宅の抜本的な拡充が必要だと考えますが、いかがでしょうか。
続けて、「被災農業者向け経営体育成支援事業」について、お尋ねします。
■「被災農業者向け経営体育成支援事業」について
熊本地震に被災した農業者への支援として、「被災農業者向け経営体育成支援事業」が実施されました。現在1次から3次まで申請が受け付けられ、補助金交付の手続きがすすめられています。国としては、61億5千万円を閣議決定し、年内に57億円を交付決定し、年内支払いができるようにと取り組んでいるとのことです。そのうち、畜舎やハウス等の施設や、機械などの修理について、事業完了の確認作業をおこない、16億円程度は年内に補助金が届くようにと関連事務作業がすすめられているようです。
本市においても803人が補助を申請しています。
1日も早く通常どおりの生産が行われるようにと、この事業は、いち早く壊れた農業施設や機械の修理復旧を行い、後付けで補助申請・補助金交付の手続きが行われるという形が取られました。おかげで速やかな復旧となり、農業者のみなさんにとってはうれしい対応でした。ところが、その後の申請から補助決定・補助金交付の作業の遅れから、まだ補助金支給に至っていません。
一方、この支援事業によって修繕等を行った事業者は、工事も完了していることから、依頼した農業者に対し、すみやかな修繕費用等の支払いを求めています。特に、年末はどこの事業者も資金繰りに奔走されるので、終わった分の支払いを求めるのは、当然であります。
差し迫った課題でありますので、以下の点お尋ねいたします。
国に対し、市として補助金の交付が早くなされるように要望すべきではないでしょうか。
また、今回の事案は、熊本地震という未曽有の地震発生によるものであり、さまざまな形で再建に取り組んでいる被災者にさらなる負担をかけないようにするためにも、熊本市でも、市が一時建て替えをするというような対応ができないものでしょうか。
以上の点につきまして、大西市長にご答弁願います。
(答弁)
(返し)
災害公営住宅については、そもそもが新たに整備するものではなく、既存の市営住宅ストックを活用する方針であったことが述べられました。
しかし、市営住宅ストックと言われましても、もともと市営住宅については、震災以前から入居希望が多く、ストックの活用どころか、7〜8倍もの高倍率で入居ができない問題があったはずです。それが、こと災害公営住宅ということになると、住宅のストックがあるという話になっているのは、不思議な気がします。
一方で、新たに建設する災害公営住宅がわずか150戸というのも、余りに少ないのではないでしょうか。本定例会で、先の公共施設マネジメント調査特別委員会の管理計画でも、市営住宅については削減の方針が出されており、あたかも、災害公営住宅も、そのストックは増やさないという方針ありきで計画が進められているのでは、と穿ってしまいます。
東日本大震災では、5年以上経った今でも仮設住まいを余儀なくされている人が多数いますが、これは災害公営住宅の整備の遅れが大きな原因です。
また、仮設入居者の見守り支援の質問でも触れましたが、対象世帯の訪問聞き取り調査がまだ完了していないとのことです。現在の入居希望数480戸も10月末時点の聞き取りから、推計したものと聞いております。今後の聞き取りの進捗次第では、入居希望者が更に増えることも考えられます。
災害公営住宅については、更なる抜本的な拡充を求めるものです。
(返し)
また、「被災農業者向け経営体育成支援事業」については、一時たて替えをしない代わりに、支払のつなぎ融資として、国の金融支援制度の活用を促すなどの対応を、実施する、その予定であるとのご答弁でした。資金繰りに切羽詰っている方々に対しては、いささか悠長な対応ではないかと思わざるを得ません。
低金利、実質無担保、無保証人であるとか、借入限度額も熊本地震向けに引き上げられている等の条件面の措置はあるものの、いっぽうで経営状態によっては、審査から実際の融資まで、一か月もかかるケースもあり得るとのことで、これでは年を越してしまいます。
国や県に対して速やかな事務手続きの要望はもとより、他都市での実績もあることです、ぜひ本市でも一時立て替えのご検討をよろしくお願いいたします。
■出張所の廃止問題について
昨年9月に示された、「区役所・出張所等の体制に関する基本的な考え方(案)」で、出張所の再編、廃止の方針が示され、廃止対象地域の住民に動揺と困惑をもたらしました。
策定の背景として、将来の少子高齢化、人口減少社会において、地域の自主自立のまちづくりを、区役所を拠点に行政が支えることが必要であること。また一方で、出張所の窓口サービス機能については、他の政令指定都市に比較して区役所・出張所数が多く行政運営上の課題になっていることとし、そのうえで、より質の高い区政運営のために、出張所の窓口サービスを見直し、まちづくり機能を強化する方向へシフトすることが必要だとしています。
要は、まちづくり推進のための人員を、出張所の窓口業務を廃止することで確保し、それに充てるということです。
しかし、一言に「まちづくり推進」といっても、はたして行政がそれぞれの地域にどう関与し、市のいうような「自主・自立のまちづくり」を支援、実現していくのか、現時点ではまったく不透明です。そもそも、「まちづくり」とは、その地域ごとに、長い年月を経て形成されてきたものであり、例えば隣り合っている校区であっても、その文化や生活圏が大きく異なっているなどということは、往々にしてあることです。
そうして形成されてきた、地域独自の文化やコミュニティを尊重した「まちづくり」であってほしいと願います。
また、各出張所は、地域の行政サービスの拠点でありました。政令市移行にあたっては、幸山前市長の「ワンストップサービス」の方針のもと、行政サービスが区役所に集約されるなか、区役所から遠い地域では明らかに住民サービスが低下した現状があります。区役所の利便性を維持するために導入されたはずの「区バス」も採算面を理由に、地域住民になんら周知もされないまま、いつの間にか廃止になってしましいました。
こうした、区役所に通いたくても通えない地域にとっては、出張所は行政サービスの必要最低限の拠点ではなかったのでしょうか。
政令市移行前、幸山前市長は、「居住する区にかかわらず、どの区役所でもできるだけサービスが受けられるような窓口サービスの充実や、区役所出張所となる総合支所、市民センターの機能の維持、更には区バスの導入など、住民サービスの低下を招かないような取り組みを進める」と説明していました。
しかし、どの区役所でもサービスが受けられるという点では、保健福祉関連で給付に関することについては、住んでいる行政区の区役所でしか受けられないサービスが存在しますし、区バスも、廃止されました。
出張所の窓口サービス廃止で浮いた人員についても、市全体で適正な人員配置に活かすとされており、必ずしも地域のほかの担当にまわる訳ではありません。
市民との約束を次々に反故にしてきた市の方針に対して、「出張所は廃止になりますが、行政サービスは低下させませんから」と言われても市民は納得できないのではないでしょうか。
また、市は、再編・廃止の理由として、他の政令指定都市に比較して区役所・出張所数が多く、行政運営上の課題になっているとしていますが、熊本市と同規模の、人口72万人の相模原市、および、人口71万人の岡山市は、23か所と熊本市よりも多くの出張所があり、行政運営上の課題にあたるとは思えません。
そうしたなか、来年平成29年度より、廃止対象の出張所では、出張所平均で約15名いた職員を4〜5名に減らし窓口をサービスコーナーに改めるとしています。サービスコーナー化した後は、相談業務も廃止し、証明書の発行業務に特化。翌30年度には、出張所を廃止、証明書発行の端末機すら置かれません。
市はコンビニでの発行で利便性が飛躍的に向上する、としていますが一方でコンビニ発行になったらどういう人たちが不便を被るでしょうか。高齢や障がいのある方で端末の扱いが慣れない人には、コンビでの発行は難しいと思います。
コンビニで証明書発行の専用機械ではない、マルチコピー機に、マイナンバーカードを読み取らせて、その上暗証番号を入力する。出てきたメニュー画面から自分の必要な書類を探しだし、タッチパネルで操作する。こうした一連の作業を高齢者や障がいのある方に強いるのは問題ではないでしょうか。
証明書のコンビニ交付の前提であるマイナンバーにしても、熊本地震の影響やシステムの脆弱性などの懸念から、本市の普及率、実際にカードを手にしておられる方の割合は、本年10月末現在で、いまだ住民基本台帳人口、約73万4千人のうち約6.24%の4万5千枚にとどまっています。加えて報道によれば「番号通知カード」の発送自体が地震の影響で遅れ、約1万6千世帯分の「番号通知カード」が未配達のまま保管されているという状況です。
こうした運用面での、そもそもの前提がいまだ成りたっておりません。
そこでお尋ねします。
まず運用面での前提である、マイナンバーの普及率がいまだ6%しかないにも関わらず数カ月後の29年度から、移行期間とはいえ、サービスコーナーという名で実質的な窓口廃止に踏み切る、相談業務の一切をなくすというのは、出張所廃止の既成事実を作らんがためと思われても仕方がないのではないでしょうか。
移行期間終了後、受付件数やマイナンバーカードの普及率が当初の想定よりも及ばないという場合には、出張所廃止を取りやめるという選択肢も必要になってくると思いますが、その考えはおありですか。
また、相談業務の廃止について、その受け皿としてどのような対応をお考えですか。
つづけて、お尋ねします。
また、出張所の再編にあたって、最寄りの区役所より5キロ以下の出張所を廃止する方針ですが、その中には、北部、飽田、花園の総合出張所も対象になっています。総合出張所と一般出張所の業務には格段の差があり、一般出張所で取り扱う業務が35項目に対して総合出張所は92項目の業務を取り扱っています。証明書発行業務だけでなく、国保や介護、保育所やひまわりカード、ひとり親医療など、高齢者、障がい者、ひとり親、子育て世代など苦労や悩み、さまざまな困難を抱えた方々の受けるサービスの申請や相談、および給付を行っています。
こうした取扱い業務、特に健康や福祉に関する相談や申請、給付の機会を一気に失う地域住民の不安は計り知れません。
出張所が担ってきた役割というのは、単にこうした行政サービスの提供にとどまりません。たとえば、北部総合出張所は、旧北部町時代から、町役場として住民に親しまれ、地域コミュニティの重要な拠点でした。それを、コンビニで証明書は発行できるからといって、区役所から5キロ以下の出張所を機械的に廃止するなどとういうのは、到底看過できるものではありません。
本年1月に、区役所・出張所を抱える19の地域で開催された住民説明会でも、再編対象となった地域では、厳しい意見が出されました。
北部地域では
「どこに区役所をつくればいいかとなるべき部分が、最初から植木ありきであった。その時点で猛反対していたが、植木を区役所にするのであれば、出張所を残して住民サービスを維持する話であった。それが舌の根も乾かぬうちに5キロ以内だからと再編されるのは到底納得ができない。」
飽田地域では
「出張所の再編については最初から結論ありきではないかと危惧している。熊本市と合併し、総合支所、総合出張所になり最終的に廃止となれば、私たちはバックボーンを失い、ますます地域格差が広がるのではないか」という意見が出されました。
このような意見に対し、市自身も「北部、飽田地域では、地域の拠点を失うことや利便性が低下することへの危惧を抱いている意見があった」として、そのことを認識していることが分かります。
しかし、問題はそのことを市がしっかりと受け止め、住民の不安に対して誠実に答える姿勢を見せるかどうかです。
4月4日から5月6日の期間で募集されたパブリックコメントでは、途中熊本地震の発生があったにもかかわらず、募集締め切りの5月6日は延長されませんでした。市に何とか自分の思いを伝えたい一心で、震災の混乱のなか意見を寄せた方もいましたが、しかし結果、コメントを寄せることができたのは、たった3名にとどまりました。意見を寄せたくても、震災で、避難所生活をされていた方、また自宅でも通信手段が確保できなかった方もいたでしょうし、なによりパブリックコメントどころではなかったという方が大半だった思います。
その後、8月に再度一カ月間、意見募集の期間が設けられましたが、意見を寄せる人はありませんでした。これは、周知の仕方に問題があった、また、本気で住民の意見を集約し運営の参考にしようという意志が極めて低かったといわざるを得ません。
パブリックコメントに意見を寄せたという方にお話しを伺うことができましたが、
「あの震災のさなか、パブリックコメントのことを覚えていた人がどれだけいたでしょうか。コメントが3人しかなかったからとして、市は再編をそのまま進めようとするのか。市には、住民の意見を真摯に聞こうという態度が見られない」と憤っておられました。
そこでお尋ねします。
出張所の再編については、あらためて住民から意見を集約する場を設定し、丁寧に意見を聞きとること。また、震災の発災後、地域での拠点を必要としている住民の思いにこたえるため、出張所、総合出張所廃止はいったん白紙に戻し、行政サービスの低下がないことを住民の納得のもと担保されるまでとことん、協議されるべきだと考えますが、いかがでしょうか。
以上の点につきまして市民局長におたずねします。
(答弁)
(返し)
7カ所の出張所を廃止するが、急激な市民サービスの低下を招かないように、証明書発行業務をサービスコーナーという形で継続する、との答弁でしたが、例えば、廃止になる大江出張所の平成26年度実績による窓口受付件数は、約82,000件です。一日当たりに換算すると、約315件。移行期間のサービスコーナーでは、4、5人の職員で対応するとのことですが、一人当たり、80〜60件の窓口業務をこなさなければなりません。本当にやっていけるのでしょうか。
くわえて、廃止対象となる3カ所の総合出張所では、窓口業務で忙殺されているであろう、そのサービスコーナーで、健康や福祉に関する相談業務まで行うということです。そのための人員配置については、なんら言及がありませんでした。よもやとは思いますが、相談業務について、専門の職員を置かないということであれば、余りにも安易な対応であるといわざるを得ません。
(返し)
パブリックコメント等の意見の集約は、規定に基づいて実施しているので問題ない、また、震災を踏まえて再度、意見聴取したとのことですが、再聴取された8月は、いまだ避難所生活されていた方がいる時期です。
方法に問題なかったとはいえ、寄せられた意見がたった3件であったということ、そしてそれが施策をすすめるにあたって、住民の意見として反映し得る数に足り得るかが問われるべきです。
・災害時の出張所の役割について
現行の出張所、総合出張所は、公民館と出張所があわさり一体となって運営されているから、出張所サービスとしての存在価値があります。出張所がなくなれば、地域の拠点になりえません。従来の公民館機能の「(仮称)まちづくりセンター」だけでは足りません。
こんかいの熊本地震では、出張所、公民館が避難所として使われ避難者のみならず、地域住民にとっても災害情報を共有するなどの拠点としての役割を果たしました。避難所の運営については、ボランティアや他の職員の応援があったからできたという側面もありますが、出張所と公民館の双方に、地域に根付いている職員が相応数いたから対応できたのだと思います。
それが今回の再編案で出張所機能を廃止して職員の配置をなくし、公民館機能を「(仮称)まちづくりセンター」として地域担当職員を多少増員したとしても、災害緊急時のマンパワーとしては足りません。
過去、2012年の北区龍田陳内の水害の際には、住民が龍田公民館へ避難されてきましたが、職員は不在、建物が施錠されたままで避難できなかった事例がありました。また土嚢の手配を頼んだら、北区役所に取りに行くよう言われた等、災害時の拠点としての役割を十分に果たせなかった教訓がありました。
こうした事からも、地域の防災・災害時には、身近にある出張所がその拠点として機能することが必要です。そのためには、人員を常時配置しておく、また災害備蓄品の増量など、逆に今まで以上の強化が、むしろ必要となってきます。出張所の廃止は、こうした防災・災害対応の取組みに逆行するやり方です。未曾有の震災を経験した本市がとるべき道とは、到底思えません。
出張所再編方針に明記されている「(仮称)まちづくりセンター(地域担当職員)の想定される役割」では、災害時の拠点としての役割は明確にされていません。出張所は廃止ではなく、災害時の対応も想定した人員を配置し、災害拠点としての位置づけを明確にして残すべきだと思いますが、いかがでしょうか。
市民局長におたずねします。
(答弁)
(返し)
災害発生時には、(仮称)まちづくりセンターの職員のみならず、地域居住の職員を地域担当して避難所運営をさせるとのことでした。しかし、今回の震災で露呈したのは、行革による正職員の削減や施設の管理を民間委託したことで、マンパワーが足りない、施設を有効に活用できない、要はそれぞれの業務に責任を負う者がおらず、対応が後手に回った、ということではなかったでしょうか。
「自助」、「共助」はもちろん大切です。しかし、災害対応の最低限の人員の確保、それを行政が放棄することはあってはなりません。災害時の拠点として出張所、及び人員を残すべきです。
そのことを指摘して、次の質問に移ります。
■国保について
国民健康保険についてお尋ねします。
熊本市の健康保険加入は、平成27年度末現在約10万世帯です。市内31万世帯の約3分の1が加入しています。そのうち所得200万以下の世帯が約8割を占めています。
国民健康保険は、全国どこでも、低所得者が多く加入する医療保険でありながら、保険料が高すぎるというのが共通の問題です。国保の負担軽減は、低所得者対策としても避けて通れません。
熊本市の国保料はどうでしょうか。熊本市では所得激減等、また低所得者への1割減免など行っていますが、他都市で実施されている多子世帯減免、障がい者減免などは未着手です。少なくない世帯にとって国保料は重い負担となっています。
国民の所得は、実質賃金が減り続けており、高齢者の年金も切り下げが続いています。一方で、介護保険料の引き上げなど暮らしにかかる負担は深刻です。
政令市の保険料モデルケースの比較で見ましても、熊本市の保険料は、40歳の夫婦と子ども2人、所得200万円のモデル世帯では、年間39万9,070円です。
ここ数年、市の国保料改悪により、その順位を次々と上げてきましたが、本年度は、とうとう政令市中、ワースト1位という、不名誉な順位になりました。政令市中、最も負担の軽い広島市の年間221,357円の約1.75倍にもなります。
年間所得の5分の1が、保険証をもらうためだけに消えていく。この国保料を払い続けるのはほんとうにたいへんです。貯金もできません。病気になり働けなくなって、滞納したら、すぐ払えなくなってしまいます。
そんな国保について国もようやく支援に乗り出しました。昨年度は低所得者対策として、保険者支援制度を約1,700億円拡充しました。これに伴い、被保険者の保険料負担の軽減やその伸びの抑制が可能としています。
こうした国の取組みで、保険料引き下げを行った政令市がある、いっぽうで、本市は累積赤字解消にその財源措置が補填され、残念ながら保険料軽減に至っていません。
本年度、市の更なる保険料値上げで政令市ワースト1位の高負担になり、震災の被害も相まって、市民生活への打撃は、はかりしれません。負担の限界を超えた、これ以上の保険料引き上げは行うべきではありません。
本市の累積赤字の拡大については、加入者に高齢者や低所得者が多い実態で、財政基盤が脆弱という構造的な課題を抱えている点や、医療費給付の伸びなどがありますが、大きな原因は国保の赤字補てんへの支援額が幸山市政時代の、2012年、2013年には、それぞれ28億8千万円、翌2014年には20億に減額されたものの、それなりの支援がなされていたのに対して、大西市政になってから、一気に8億円と大幅に減額されたことが何よりの原因です。
制度上の構造的な矛盾を少しでも解消するために行われてきた一般会計からの繰り入れを、政令市平均の半分以下まで減額したことが大きな原因です。
毎年の国保会計の赤字補てん分の繰り入れ大幅に減額されたことで、単年度収支は21億円もの赤字、累積収支も43億円の赤字となりました。このような財政運用をしながら、政令市で高い方から2番目だった保険料の引き上げが決められました。
しかも、平成28年度も赤字補てんの繰り入れは昨年度同様8億円が予定されているので、単年度収支の赤字、累積収支のさらなる悪化が予想されます。
市民にはとんでもない高い保険料負担を押し付けながら、赤字は増えるばかりです。
また、今回の震災で、所得200万円以下が8割をしめる、熊本市の国保世帯にとって、震災からの生活、住宅再建のために経済的負担を余儀なくされるなか、年金は下がる、介護保険料の負担は増える、などで生活困窮に追い込まれる世帯がこれから増えていくであろうことは、想像に難くありません。
熊本地震では、被災世帯に対し、国保険料減免が行われています。申請件数、15,992件のうち、8割以上の13,291件で減免が実施されていますが、この減免も一部損壊世帯では適用されません。住宅被害の6割以上を占める一部損壊世帯への適用がないために、国保加入の約10万世帯のうちのわずか12%しか減免を受けられない状況です。
こうしたなか、持病があり通院、治療が必要な人のなかでも、受診抑制につながっているケースがあるのではないでしょうか。
熊本地震の被害により生活が困窮しているときに、政令市で最も高い保険料をとって、当たり前だとしている市の姿勢には、大いに問題があります。
このような、震災被災者の生活の苦しみを鑑みれば、国保料について、今行うべきは、一般会計からの繰入額を最低でも2012年ベースに戻し、国保会計の健全化を図ることです。そうすれば、保険料の引き上げを行わなくても単年度の収支均衡が図れるとともに、収支の改善が見込まれ、国保料の引き下げもげも可能なってくると思います。
そこでお尋ねします。
まず、政令市でワースト1位となった本市の国保料はについて、高過ぎる国保料であるという認識はお持ちでしょうか。
そして、先ほど紹介した国保加入世帯の実態から見ても、引き下げるべきだと思いますが、いかがでしょうか。そのために、大西市長になって、ずっと減らされ続けている一般会計からの繰り入れを、元に戻すべきではないでしょうか。
大西市長におたずねします。
国民健康保険は、全国どこでも、低所得者が多く加入する医療保険でありながら、保険料が高すぎるというのが共通の問題です。国保の負担軽減は、低所得者対策としても避けて通れません。
熊本市では所得激減等、また低所得者への1割減免など行っていますが、他都市で実施されている、低所得者減免、生活困窮減免、多子世帯減免、障がい者減免などは未着手です。本市でもぜひこうした減免をおこなうべきだと思いますがいかがでしょうか。
担当局長におたずねします。
(答弁)
(返し)
市長ご自身も、保険料の負担は重いとの認識をお持ちとのことでした。
しかし、厳しい財政状況が続くもと、保険料の引き下げは困難、また一般会計繰り入れは、国保被保険者以外の市民も負担することから、元に戻すことは出来ないとのことでした。
しかし、大西市政がこの間行ってきた、一般会計からの繰り入れの大幅減額は、いうなれば国保制度の構造的矛盾、その傷口を更に広げるような暴挙であり、到底看過できません。収納率向上も、払える保険料に戻してこそです。
更に震災の被害で、より保険料納付が困難になり、受診抑制につながるようなことになれば、新たな関連死を生み出すことにもなりかねません。
累積赤字の解消、またいまだ震災の被害にあえぐ市民の生活、もとより健康や命について考えるならば、いま本市がまずやるべきことは、一般会計からの繰り入れの増額であり、国の矛盾をこれ以上拡大し、市民にそのしわ寄せが及ばないようにすることです。
そのことを強く訴えまして、次の質問に移ります。
次に、差押えについておたずねします。
平成27年度において、国保料の滞納世帯は、3万4,949世帯、加入世帯の約35%です。うち、短期被保険者証発行世帯が15,374世帯、資格証明書が44世帯あります。資格証明書は、治療費をまず10割全額払わなければなりません。当座のお金がない、なると病院にすぐには行けません。全体のわずか44世帯とはいえ、保険証を取り上げるという、こういう現状は「国民皆保険」とは言えない事態であると思います。
それでもここ数年、短期被保険者証や資格証明書の発行は減ってきています。
滞納世帯数も減少傾向にあり、年次推移で平成25年度が40,790世帯、26年度が38,623世帯、27年度は3万5千世帯を割りました。
しかし、問題は、差し押さえ件数が増え続けていることです。平成23年度は245件でしたが、26年度は634件、昨年は754件と増えています。財産調査の件数も、23年度は約5,331件だったものが、26年度は約117,916件、27年度が139,916件と大幅に増えています。
そして、昨年度初めて、給与や、不動産収入までが差し押さえの対象となりました。生活の糧となる債権の差し押さえはすべきではありません。
財産調査を139,916件も行っている、そして差押えが754件ある、という現実から見えてくるのは、滞納者が頑張って納められるような納付相談に努められているか、ということです。
財産調査の労力よりも、直接会って話をする、訪問する、などの体制こそ必要なのではないでしょうか。今のまま収納率をさらに上げようとすれば、無理な収納強化となるのではないでしょうか。滞納者の実情を無視した差押えが行われるのではないかと大変危惧いたします。
そこで、お尋ねします。
給与、年金、不動産収入など、生活の糧となるものの差し押さえについては、どんな対応をしていらっしゃいますか。
また、差し押さえに至るまでの手続き、滞納者への納付相談などはどうなっていますか。
くわえて、年金は、年金の受給権として、差押えは禁止されていますが、いっぽうで一旦預金口座に振り込まれると、年金の受給権ではなく、預金債権という扱いにより、実質、差押えが可能という事例があるようですが、本市ではその点について、どのように扱われていますか。
担当局長におたずねします。
(答弁)
(返し)
年金や給与については、預金債権となった口座振り込み後も、支給日当日にあわせた差押えは実施していないというものの、支給日後については、差押え禁止額を参考にするなど、慎重に対応しているとのことでした。これは言いかえれば、慎重に差し押さえるとも受け取れかねません。
いま必要なことは、国保制度の矛盾を深めていくような一般会計繰り入れの削減をやめ、応分の繰り入れを行い財政の改善に努めることです。
国民健康保険会計は、平成30年度に県への移管が予定されています。
国民健康保険制度が大きく変わろうとしている時だからこそ、「国民皆保険」の原則を堅持するよう、国保制度の矛盾を深めていくような一般会計繰り入れの削減はやめ、応分の繰り入れを行い財政の改善に努めていただきたい。市民が、払える国民健康保険料に引き下げ、市民の立場に立った、「きめ細かく、ていねいな対応」を行っていただきますよう、重ねて強く要望します。
■2016年12月議会一般質問「桜町再開発・MICE整備」
今回の議会には、(仮称)「熊本城ホール」の整備に向け、いよいよ桜町再開発事業の保留床を取得する議案が提出されました。30,800uを総額283億円で取得するというものです。
私ども日本共産党市議団は、これまでも再開発やMICE整備の問題を議会で取り上げ、問題点を指摘してきました。しかも、今年度は熊本地震という未曽有の大災害が発生し、その復興に本市が多額の費用を費やしながら、今も日夜取り組んでいるところです。日本共産党市議団として、市民アンケートにも取り組み、市民の声を聞いてきましたが、市民の立場で、疑問と思う点を質問します。
1、これまでも繰り返し求めてきましたが、桜町再開発と(仮称)「熊本城ホール」の整備についての説明が市民にほとんどなされていません。283億円もの事業費を支払っていくのですから、それに先立ち市民への説明をきちんと行い、理解を得るべきではないでしょうか。
2、提案されている保留床の価格が妥当なのか、その検証はどのように行っておられるのか。いつ、どのような形で行ったか、具体的にご説明ください。
3、今年10月に、再開発事業の概要が示され、(仮称)「熊本城ホール」のほか、商業施設・シネコン・ホテル・バンケット・マンション・バスターミナル・駐車場・事務所・共用部分などの面積が具体的に説明されています。本市の保留床取得議案の提出も含め、いよいよ再開発事業が本格的段階に入ってきていると思われます。そこで、具体的に示されている施設概要のどの部分に地元の企業・事業者が参加してくるのでしょうか。再開発事業が地域経済にどう貢献するのか、大事な点だと考えますので、ご説明ください。
以上3点、市長にお尋ねいたします。
(答弁)
市民への説明については、いろいろな場を設け意見を交わし、パブリックコメントやアンケートなど、機会をとらえ意見聴取を行ってきたという市と、説明を受ける側である市民には温度差があると思います。今立ち止まって考えなければならないのは、熊本市がMICE整備計画を進めている最中に、未曽有の大地震が発生し、市民の気持ちや行政の仕事のありようが一変したということです。
今議会に提出されております、「熊本地震復興期におけるMICE施設整備計画の多面的な再検討と、市民への説明責任を求める陳情書」では、「地震からの復興に多額のお金と時間がかかると言われている中で、市が計画しているMICE施設を整備する場合、更なるお金を市民が負担しなければならないことを、私たち市民の多くが初めて知りました。市立学校の体育館の復旧、市民病院の再建、動植物園の復旧、熊本城の復興・・・。熊本が負った深い傷を癒し、元の姿を取り戻すためにやるべきことは山のようにあり、膨大な時間とお金がかかります。それもまだ手付かずの今、MICE施設を整備することは、本当に必要なのだろうか?こうした疑問がわいてきました。」と、市民のMICE整備に対する思いが率直に述べられています。
この陳情者の方々が行われたアンケート調査でも、「今熊本市がお金をかけてでも取り組むべき最も重要な課題は何だと思いますか」との問いに、約半数の方が「熊本地震からの復旧・復興の推進」と回答され、「再開発に合わせた大型集客施設の整備」を選んだ方はわずか7.3%でした。私ども日本共産党市議団が9月、10月に行った市民アンケートでも、地震からの復興に向け取り組んでほしいことの項目で、「再開発・MICE建設を急ぐ」と回答されたのは、780人のうちわずか6人、0.8%でした。
先ほどの答弁で市長は、「地震後、震災復興計画に重点プロジェクトと位置付け、パブリックコメントを実施した」と、それで市民の理解が得られたかのような答弁をされましたが、地震の復興に向けてMICE整備を重点として取り組んでいくことに市民の理解は得られていないというのが、実態ではないでしょうか。
それもそのはず、市のパブリックコメントに意見を寄せられたのがわずか14名であったことは市長が一番よくご存じだと思います。パブリックコメントが実施された8月19日から9月9日の3週間は、まだ市の拠点避難所も開設されていて、避難生活を送る方もおられました。切羽詰まった思いで日々の暮らしをする方々が、冷静に復興計画に意見を述べられるような段階ではなかったと思います。帳面消しのようなパブリックコメントを盾に、説明責任を果たした、市民の理解が得られていると言われるのは、あまりも傲慢ではないでしょうか。
震災復興計画を決定した臨時議会で、上野議員が指摘しましたように、「第7次総合計画」の基本計画の一部となる復興計画であり、重要な位置づけのものです。にもかかわらず、説明会すら開かれず、わずか14人のパブリックコメントによる意見聴取で、済ませているところが重大な問題です。
しかも、その少ないパブリックコメントの意見で、MICEにかかわるものが6件ありましたが、
一つは、「このような時だからこそ、桜町再開発とMICE施設の必要性・重要性について進捗状況を含め丁寧に市民への説明を定期的に行ってほしい」という説明責任を求める意見。
2件は、施設内のブースの内容と、MICE施設と新市街をぬれずに通行できるようにしてほしいという施設・その周辺についての意見。
あと3つは、MICE施設が多額の税金投入を必要とすることから、中止・凍結、あるいは白紙再考を求めるというものであり、桜町再開発にMICE施設を整備することが、まだまだ説明不足であり、市民の理解が得られていると言えるようなものではありませんでした。地震発生後の今、MICE整備について説明会を開く、アンケートを取るなどして、市民への説明責任を果たし、意見を十分に聞くべきであると考えます。
保留床価格の妥当性については、今年7月末に再開発準備会社から提示された最終的な床価格について検証を行い妥当性を確認、最終的には不動産鑑定士による評価額約283億円を購入費とすることで協議が整ったと言われましたが、市長は議会にまともに説明する気があるのかと、疑いたくなるような答弁に思えました。
私は、今議会に保留床取得の議案も出ていることから、この間、市が保留床価格の検証を行うために行ってきた、委託事業や不動産鑑定の結果を拝見しました。
一つは、「公益財団法人・日本建築積算協会」に委託し、今年度行った「(仮称)熊本城ホール工事費管理支援業務委託」で、工事費積算の妥当性を検証するものです。
2つ目は、「(株)鑑定ソリュート熊本」に委託し、昨年度から今年度まで2カ年にわたって行われている「(仮称)熊本城ホール保留床価額算定基準検証業務委託」で、事業者が策定する権利変換計画書や床価額算定資料等について専門的にその妥当性を検証するものです。
3つ目が、「日本不動産研究所」に依頼した不動産鑑定です。
工事費の妥当性検証では、工事費の内訳明細書の単価・メーカー・見積もり金額など、すべて真っ黒に墨塗りされており、結果欄の「妥当」という文言を鵜呑みにするしかありませんでした。しかも、9月議会で説明されましたように、工期が1年延びていますが、この検証では工期延伸に伴う現場管理費増が懸賞の対象となっていないことや、熊本地震による大幅な建設工事価格の上昇の可能性は少ないと判断している点も、疑問です。
「鑑定ソリュート熊本」の保留床価額の検証も、MICE以外の数値はほとんど黒塗りで、妥当な積算なのか、評価のしようもありません。
不動産鑑定では、原価法により取引事例比較法を適用して査定するとしながら、土地でも、建物でも、取引事例の大事な部分は黒塗りで、標準価格の査定が妥当なのか、私たちには検証することができません。
ようするに、保留床価額の妥当性は、民間事業者が妥当だと言っているから妥当なのだと、思うしかないような検証です。しかし、こんな説明で、市民が納得するでしょうか。税金を450億円もつぎ込む事業でありながら、この程度の説明で済ますべきではないと思います。
再開発事業への地元企業の参加については、「一般的に出店される事業者名はオープン直前にしか公表されない」と言われましたが、そんなことは聞いていません。個別の事業者名でなく、地元の企業がどの程度参加されるのかを伺ったのです。桜町再開発は、九州産交が主体とは言っても、実際上は「HIS」という県外の大手企業がすすめている再開発です。県民百貨店やセンタープラザがなくなったことで、地元企業とその従業員の働く場もなくなりました。そこに熊本市が市政史上最大の税金投入をしようとするのですから、当然、地元に貢献する再開発でなくてはならないと思います。熊本市が購入する保留床の取得価格を見てもそうですが、再開発の床は価格が高いために、なかなか参加企業が決まりません。県外大手チェーンなど、体力のある企業は参入できても、地元の中小企業にとっては難しいというのが現実です。
そこで、市長にお尋ねします。
「地元企業が優先的に出店される場所を設けたい」という再開発事業者の意向を聞かれているようですが、詳細に示されている再開発事業のどの部分に、どの程度の地元企業が入ってくる見通しを持っているのか、具体的にお答えいただきたい。
いつまでも、事業者に求めるという答弁でなく、283億円も払って保留床を取得するのですから、きちんと市民に説明する、示す時期に来ているのではないでしょうか。
(答弁)
(返し)
何度聞いても、まともな答えはありません。「地元業者が入れるように、再開発事業者に求めていく」というのは、去年から言われていることです。桜町再開発は、事業主体の「HIS」はじめ、総事業費の大部分を占める607億円もの工事費を払う「大成建設」など、県外の大企業によってすすめられています。
地元企業である県民百貨店やセンタープラザテナントを追い出し、できた再開発ビルに県外の企業・テナントしか参入しなかったら、誰のために市民の税金を400億以上もつぎ込むことになるのでしょうか。せめて、地元の企業が参入して、見える形で地元に貢献する施設とすべきではないでしょうか。
再開発事業が認可され、いよいよ保留床を取得しようというのに、いつまでも、事業者に伝えるだけではいけないと思います。直ちに、地元企業がどの程度入ってくるのか、市民に説明していただくこと、強く要望いたします。
大地震を経た今、今12月議会までに提案された復興予算は1095億円にも上っています。莫大な復興予算は、全額国庫負担ということではないので、市の負担もあり、その財源ねん出に市も苦慮されています。
9月議会では、本年度の当初予算を100億円削減したという報告がありました。次年度も、新年度予算編成のために、経常経費・政策経費共に15%のシーリングがかけられています。
これまで実施してきた何らかの事業を止めないと予算がたたない状況です。
100億円あった財政調整基金も取り崩し、今や22億円に。貯金も底をついています。そんな時に、地震前からの計画であった、復興とは別物のMICE整備を、復興計画の重点事業に位置付け、聖域扱いして無理やりすすめていくことに、多くの市民が疑問を持っています。
1095億円の復興予算は、本格的復興に向け、さらに増加します。それとMICE整備が両立するのか、市民の疑問に答えるべく、立ち止まって真剣に考えるべきです。
震災の復興では、多くの市民が願っている一部損壊世帯への再建支援や、液状化などの地盤被害への支援、学校体育館やホールなどの復旧など、多額の費用を必要とする課題が残されたままです。
先ほど質問しましたように、国民健康保険会計への一般会計繰り入れは大幅に減額されたままです。市長の公約である子ども医療費助成制度の拡充など、市民が必要としている事業に、必要な財源措置がなされないまま、誰も急ぐことを求めていないMICE整備の予算を聖域とすべきではありません。
1日も早く被災された方々が元の生活に戻って、安心して暮らすことを最優先で取り組んでほしいと思います。そのためにも、MICE施設の保留床取得の撤回を強く要望します。
そのことを重ねて申しまして、次の質問に移ります。
■立野ダムについて
立野ダムについてお尋ねします。
前回、第3回定例会で、那須議員が質問いたしましたが、ダムの最大受益者である熊本市にとっても大事な問題であるとともに、国の事業だからという理由で、市民に対する本市としての説明責任がちゃんと果たされているのか、大いに問われなければならないと考えますので、今回も引き続き質問させていたただきます。
まず大西市長におたずねします。
11月27日、日曜日 立野ダム建設予定地ならびにその周辺地域に視察に出かけられたと伺いました。崩落した阿蘇大橋はじめ長陽橋をめぐり、立野ダム建設予定地までの視察であったと伺っております。
地震やその後6月の豪雨で、斜面が崩壊し山肌があらわになった立野ダム建設予定地を実際に目の当たりにした人からお話を伺えば、皆さん「こんなところにダムをつくるのか」とか、「はたして、本当にダムをつくって大丈夫なのか」と異口同音におっしゃいます。
そこでお尋ねします。
ダム建設予定地をおよびその周辺を視察し、大規模な崩落の状況をみたとき、この周辺地域が危険だとは思われませんでしたか。
市長におたずねします。
(答弁)
ダム建設予定地では、一時間ほどかけて現地を歩いて視察されたと伺っております。立野ダム事務所長からダムの形状や基礎地盤の健全性の説明を受けられたとはいえ、現場を訪れた人が異口同音に、その被害のすさまじさに、果たしてダムは本当に大丈夫なのかと、おっしゃる、またかつて立野ダム推進派であった流域の保守系有力者の方ですら、現場を見てダムは必要ないとの認識に変わった、と言わしめるほどの状況を、目の当たりにして、地震による被害はなかったとされる市長の答弁には、いったい現場の何をご覧になったのかと、疑問に思わざるを得ません。
さて、今回はダム津波について改めて質問させていただきたいと思います。
7月17日に行われた国土交通省の「第3回技術委員会」で配布された資料では、「立野ダム湛水予定地周辺では、熊本地震での斜面崩壊後、6月洪水で斜面崩壊の範囲が広がっている」ことを指摘し、地震による地割れ、地盤の不安定化に大雨が追い打ちかけ、新たな斜面崩壊が発生するといった状況を認めています。
林野庁の「平成28年熊本地震に係る森林域における航空レーザー計測」は、「熊本地震で多くの山腹崩壊等が発生しており、このほかにも地盤が脆弱になっているだけでなく、多くの亀裂や小崩落が発生している」と指摘し、航空レーザーを用いての詳細な地形状況を明らかにしています。
さらに資料は、熊本地震時の崩壊に加えて、地震でできた地割れ、ひびによって、6月洪水で崩壊箇所が広がっていることを如実に証明しています。特に北向き山は、各所で山崩れが発生しており、ダム堤予定地上流左岸は、杉の植林地であり、今後、余震、大雨で大量に崩落する危険性が大いにあります。
8月23日、日本共産党の田村貴昭衆院議員が現地調査を行った際、立野ダム事務所長より、熊本地震とその後の6月洪水で、建設予定地河川には、約100トンの土砂が流入しているとの報告を受けました。
もしダムが完成して試験湛水中、あるいは雨が降ってダムに水がたまっている状況の時に地震が起きれば、この土砂崩れがダム湖になだれ込み、津波が発生していたと思われます。
1963年、イタリアのバイオントダムでは、実際にダム湖の中に土砂が崩れ落ち、ダム堤体そのものは壊れなかったものの、ダム湖で津波が発生し、ダムを超えて大量の水が下流の町を直撃。2,000名もの尊い命が奪われました。活断層付近にダムを作ることが、あるいは斜面が崩落しやすい箇所にダムを作ることがいかに恐ろしいことかを物語っています。この大惨事は決して他所事ではありません。
いっぽうで、国交省は、試験湛水時、洪水時のダム満杯状況での地滑り、斜面崩壊についてのシミュレーションはやっていません。これも先の現地調査の際、立野ダム事務所長が明言し、また国交の立野ダムのレクチャーでも明らかにしたところです。
このように、技術委員会自身が、「立野ダム湛水予定地周辺では、熊本地震での斜面崩壊後、6月洪水で斜面崩壊の範囲が広がっている」と認めているにもかかわらず、いっぽうでダム津波については、まったくそのシミュレーションをやっていないことを考えれば、技術委員会が大丈夫としていることは、なんら裏付けがなく無責任な態度だといわざるを得ません。
人命最優先の立場に立つならば、技術委員会の結論をうのみにせず、まずは科学的で公正な安全性に関する検証を求めること、そのことこそが必要ではないでしょうか。
そこで、大西市長におたずねします。
ひとたび、ダム津波が起これば、流域自治体のみならず、熊本市街地も多大な被害を受けることが想定されます。その危険性について、ご自身でどう認識されますか。
続けて、質問します。
次に、熊本が世界に誇る、貴重な財産である地下水への影響についてお尋ねいたします。
先月、崇城大学名誉教授の村田重之先生(土質工学・防災工学)の、「阿蘇の過去の豪雨災害から立野ダムを考える」の講演を聴講しました。
その講演のなかで、先生が大変興味深い指摘をされていました。
立野ダム建設予定地は、その脆弱な地盤のせいで、岩盤の割れ目を埋める為に大規模なグラウチング、つまりセメントミルクの注入を行う必要があります。
これは岩盤からの水漏れを遮断すること、遮水壁をつくること意味します。
熊本市は阿蘇カルデラからの伏流水、外輪山に振った雨が地下に浸透して熊本市に流れてきた水で水道水をまかなっていますが、いっぽうで、阿蘇から熊本市への地下水の流れは、まだ完全に判明していないのが現状です。そのことから、地形的に考えれば、地下水脈が立野河口瀬の下あたりを通っていることも十分考えられます。このグラウチングにより地下水の水脈が遮断されると、熊本の地下水の供給が止まって大変なことになります。
また、地下水が流れている状態では、セメントミルクはなかなか固まりません。グラウチング工事で地下水に触れたセメントミルクが、固まることなく地地下水脈に流入、そのことで地下水が汚染され、汚染された地下水が熊本市に流れ込んでこることも十分に考えられます。また一旦地下水が汚染されれば、元に戻すのにも長い年月を要することでしょう。このことは、たとえは違いますが、福島第一原発で行われている棟土壁工事が地下水脈に触れて土壌が全く凍らないことからも、容易に想像できると思います。
熊本市が誇る「蛇口をひねれば、ミネラルウォーター」のブランドも台無しになるどころか、市民の飲料水も損なわれる結果になります。
こうした、地下水涵養の源に大量のセメントミルクを流すことで、地下水脈の遮断、汚染の危険性がないのか、市長のご認識をお聞かせ下さい。
続けて3点目、河川改修の問題について、お尋ねします。
2012年の九州北部水害後行われた「激特事業」による河川改修で、流下能力が上がっていることは、国交省自身が発表している流下能力算定表にもはっきり示されています。
一方で、2001年から開始されている「白川水系河川整備計画」では、まだ改修が積み残しになっている区間があり、国交のホームページでも改修が未整備で、地域からも早急な対策が望まれている区間として、住民の声とともに、国交自身が取り上げています。
こうした、住民からの強い要望がありながら、「白川水系河川整備計画」は、現在「激特事業」の一環としておこなわれており、5か年の事業計画も来年で終了します。その後は、再度、整備計画の目標を設定しなおすなど、計画の履行についてはまだ時間を要する。そうしたなか市長は、立野ダムの早期の建設を要望されています。
ダムによらない治水で目標達成は可能であるにも関わらず、万が一の事故が起これば取り返しのつかない事態になるダムによる治水の道は選択すべきでありません。
2012年の水害も、ダムがなかったから起こったのではなく、河川改修がなされていなかった所から、水が溢れたのが実態です。「激特事業」の例をあげるまでもなく、河川改修なら数年で完了できます。河川改修をなおざりに、ダム優先でいいのでしょうか。流域市民の安全を守る責任がある市長として、河川改修こそ推進する必要があると思いますが、いかがでしょうか。
以上、3点につきまして、大西市長にご答弁を求めます。
(答弁)
(返し)
ご答弁ありがとうございました。
まず、ダム津波については、前回の第3回定例会において、那須議員がその危険性を丁寧に指摘した上で質問いたしましたが、市長からは、質問に対して具体的な答弁はなく、「『技術委員会』から立野ダムの建設は技術的に充分に可能であることの結論が示されたことは承知している」として、自身の判断については明言を避けられました。
それで、今回私から、再度その危険性をお示しした上で、質問させていただいたのですが、今回も中身に対する言及はなく、「第3回定例会で答弁させていただいた通り」などという全く誠意がないというか、ご自身の言葉で語られようとしないその姿勢に、その内、市民との対話、質問に対しても「議会で答弁した通り」などとお答えになるのではなかろうかと、逆に心配なってまいりました。
地下水への影響についても同様で、「地下水へ影響を与えないよう、国交省に申し上げて参る」とされていますが、いっぽうで大西市長は、熊本市地下水保全条例の第5条にあるように、「地下水水質保全の為必要と認めたときは、国に対して必要な措置を取ることを求めなければならない」、という責務を負ったお立場であります。はたして、万が一、ダム建設工事に起因する地下水への影響が生じた際に、工事の差し止めを含めた、その責務を全うする気概が果して、おありかどうか、一連の答弁から伺える市長の国任せの姿勢では、はなはだ疑問であるといわざるを得ません。
河川改修の問題について申せば、川辺川ダム計画では、人吉市の洪水流量毎秒7000トンのうち2600トン、全体の約37%を、川辺川ダムで洪水調節することになっていましたが、川辺川ダム建設は中止され、現在、国、県、地元が一体となってダムによらない治水対策が検討されています。
一方、白川の河川整備計画では、熊本市の洪水流量毎秒2300トンのうち200トン、全体の約8%にすぎません、を立野ダムで洪水調節することになっています。この数字を見ても、立野ダムによらない治水対策は十分可能です。
これまでの質問を通じて私が感じたのは、例えばダム建設予定地の崩落のありさまを見て、危険だとお思いにならない感覚や、国交省の説明を鵜呑みにされる、その認識の危うさです。
市長はあらゆる場で、ダム建設推進の立場で発言されています。いっぽうで議会では、ご自身の言葉で一切答弁されないにも関わらず、何を根拠にダム推進の旗振り役をされているのかと、極めて残念に思います。
国まかせではなく、市長として市民に対する説明責任をしっかりと果たしていただくことを、改めて求めまして質問を終わります。