駅前東A地区再開発事業に関する申し入れ
熊本市長
幸山政史 様
駅前東A地区再開発事業に関する申し入れ
−東京都心再開発の引き写し計画では「熊本らしさ」が台無しです!
今からでも遅くない、市民の合意で駅前整備を!−
2007年3月
日本共産党熊本市議団
益田牧子
重松孝文
上野美惠子
那須 円(事務局長)
はじめに
3月22日、幸山市長に対して、駅前東A地区再開発事業に関する「事業提案競技審査報告書」が同審査会より提出されました。そして、6月にも選定したグループと契約をする方向で計画を急いでいると報道されています。この事業に関しては、私ども市議団としてもかねてより重大な関心を寄せていましたので、ただちに報告書を取り寄せて、検討しました。その結果、いくつかの重大な問題点が明らかになりましたので、申入れをする次第です。
1、 一つは、公表された「報告書」では、なぜ森ビル都市企画鰍中心とする「ABILITY11グループ」が選定されたのか、具体的にはほとんど理解できないという、まさに初歩的な問題です。「報告書」に記載されている「審査結果の総評」を読ませていただきました。「機能提案」「空間提案」「事業性」の3項目を着眼点として審査したとのことですが、どの項目をとっても、「両グループとも本事業の目的や果たすべき役割をよく理解した提案となっていました。」「両グループとも建物の外観に配慮が施されている提案となっていました」「将来の管理運営組織等の提案については両グループとも創意工夫が施された提案となっていました」などと、しながら、部分的に「物足りなさを感じました」とか「やや優れている」といった表現がちりばめられています。他方、「高く評価しました」というのは、「魅力的な回遊動線」「中庭空間の配置」「情報交流施設に出入りしやすい」「建物を分棟化することで権利関係を明確」等々で、重要ではないとは言いませんが、選定において決定的な要因となるものではありません。
実際の審査過程ではもっと突っ込んだ検討がなされていると思われますが、「総評」を読んだ限りでは、少なくとも私どもには、とうてい理解できるものではありません。そこで、私どもは、駅周辺整備室に、「もっと理解できるようにするためには、両グループの提案そのものを見せていただかなければ納得いかない」と情報の公開を求めましたが、駅周辺整備室の説明によれば、提案グループの側から「企業秘密に関する部分があるので、公開はお断りしたい」との希望があったとのことで、情報公開は拒否されました。しかし、それでは大多数の市民もなぜこのグループが選定されたのか、納得いかないでしょうし、議会としてもこの程度の資料で理解したということになれば、議会の見識が疑われることになりかねません。そこで、この点に関して、@審査委員会の「選定に関する」審議記録を公開していただきたい(発言者や、情報公開条例にもとづき公開がふさわしくないと思われる部分については非開示としても結構です)。A2つのグループの提案そのものを開示していただき、せめて閲覧できるようにしていただきたい。B閉会中に建設委員会と総務委員会を開催するように議員団として各委員長にも要請しますが、その際、審査会の委員長にも出席できるように取り計らっていただきたい。以上3点については、審査会の判断を要する点もあるとおもいますので、 執行部と審査会で協議して文書で回答していただきたいと存じます。
2、 2つ目の問題点は、この提案競技にそもそも疑念が生じているという問題です。それは、2つのグループの提案が公開されれば、解消できる問題とは思いますが、数ページの報告書だけでは到底納得できません。その疑念とは、2つのグループから提出されているものの、選定から漏れた「三井不動産・大成建設グループ」の提案は、きわめて杜撰で、当初からなんとしても選定してもらいたいといった意欲さえ感じられないものとなっていることです。公表された同グループの2枚の文書・図画をみれば、だれもがそのように感じるのではないでしょうか。たとえば、概観上も駅前に巨大な壁ができるようなものとなっており、導入する民間の床についても「商業施設中心」としているだけで、「なぜ商業施設なのか」「どんな商業施設を構想しているのか」「中心市街地との関係はどうなのか」等々、肝心なことは何一つ具体的ではありません。しかも本来、市の構想からすればこの地区の中心的な施設とすべき公共施設・情報交流施設が8階より上の階に配置され、商業施設が1階から7階を占め、文字通り「商業施設を核とした再開発ビル」計画そのものであり、情報交流施設は添え物となっているではありませんか。これでは、初めから「選定」を強く願ってもいないということが明らかです。役所の中でも「選定されるグループは初めから決まっているできレース」「三井グループは当て馬でしかない」「提案が1グループでは問題となるので、もうひとつのグループに協力してもらっただけではないのか」等々のうわさがまことしやかに流布されていました。私どもは「まさかそんなことはないだろう」「プロの目で審査するのだから、それをごまかすようなことはしないだろう」と考えていましたが、公表された報告書を分析した限りでは、こうした「うわさ」を否定できないだけでなく、逆にそういうこともありえない話ではないと疑いを強めています。そうであれば、「提案競技」の『談合』とも言うべきものです。もし、そうでないというなら、提案したグループとしても、提案そのものを自ら積極的に公開すべきだと存じます。私たちは、今回の2グループの提案が十分理解できない2枚の資料を比較する限り、「談合」の疑いを晴らすことができません。もし全面公開できないというのであれば、その具体的な理由を明示していただけないでしょうか。
3、3つ目の問題は、選定された「ABILITY11グループ」の提案そのものが、駅真正面に構える中核施設としてはまったくふさわしくないということです。
その理由は第1に、今回の提案はどこから見てもまさに「駅前超高層大型マンション」に「情報交流施設が付随している」というものとなっていることです。民間が自らの土地にマンション開発するのであれば、周辺住民の理解が得られれば、必ずしも否定されるものではないかもしれません。しかし、今回は、市が40億円以上の税金を投入して取得する土地の上に、しかも公共施設の導入を最大の目的とした計画の中心にマンションをすえるというのでは、市民の理解は到底得られないでしょう。選定グループが決定したという報道の後、わたしたちも多くの市民に「どう思いますか」と率直にお尋ねしましたところ、「図書館でなくマンションが中心になってしまいましたね」「市の施設と思っていたのに、民間の施設が中心なんですね」「駅のまん前に市が百億円以上も投入するのに、民間マンションが中心というのでは納得できないですね。市の土地の上にマンション建設ということはそもそも間違っていると思いますよ」「駅前にマンションというのでは熊本らしい駅前というのが台無しではないですか」「県が駅舎の設計について建築家の安藤忠雄氏に依頼したというニュースを聞いて、これはユニークなものになるかもと期待していましたが、こんな巨大なマンションが駅前の真正面にできれば、安藤氏の構想に大きく水をさすことになるのではないかと心配しています」等々、心配する声は聞こえてきますが、賛同する声はまったく聞かれませんでした。こうした心配の声が出てくるのは当然の話です。情報交流施設が添え物になり、超高層マンション中心になったことについて市民の理解が得られていないことをどのようにお考えなのでしょうか。
第2は、東A地区の県市協定にもとづく位置づけ・構想からしても、説明がつかない提案となっていることです。選定されたグループの企画書によれば、結局、市の構想は付け足しで、「24時間人が行き交い活気と賑わいのあるまち」「100メートルの超高層マンションを駅周辺・副都心のシンボルタワーにする」というのが具体的な中心コンセプトとなっています。しかし、そもそも東A地区の再開発コンセプトは「出会いとふれあいの副都心の中核施設として―九州・熊本の情報発信と交流を行う舞台、都市機能と交流を支える場」として、位置づけられていました。そして、西地区が「新しい都市機能を創造する場」として都心(まちなか)居住を促進する地区とされていました。ところが、東地区も西地区もごちゃ混ぜにした今回の提案を「定住人口の増加や、新しいライフスタイルとその環境づくりに期待が持てる」と評価していますが、そもそも東A地区のコンセプトと違うものをただ『新しい』として評価するのはいかがなものでしょうか。ましてやその最大の特徴が「24時間人が行きかうまち」というのは、東京六本木ヒルズ開発の発想を熊本に持ち込んだだけで、「くまもとらしいまち」とはまったく逆行するのは明白です。「新しい」というものではなく単なる「東京コンプレックス」に過ぎないのではないでしょうか。「熊本ブランド」「熊本らしさ」に熱心に取り組もうとしている多くの市民の思いを台無しにしてしまうのではないかと心配せざるをえません。
第3は、今回の提案を採用すれば、東京資本である「森ビル企画」と大手ゼネコンに儲けの場を提供しただけの結果となりかねないという問題です。「選定」された計画案は、結局のところ駅前の一等地でしかも熊本市が所有する土地上に建設する「超高層マンション」を経営することにより利益をあげ、さらに公共が負担する建設費により利益を上げようとするものであり、地元中小企業にはほとんど見るべき利益は回ってこないと見込まれます。本市が実施し、近年において最も多額の経費を投入する建設事業で、このように中央資本に吸い上げられるのでは、市民の理解は得られないでしょう。なお、「分譲マンション」にする計画とのことですが、市有地との権利関係はどうされる提案となっていたのでしょうか(たとえば定期借地権とか)。
4、 4つ目の問題としては、区画整理で辛酸をなめさせられ、先の見えない暮らしを強いられている駅西地区のみなさんの、「駅前にそんなマンションを建てるくらいなら、駅西地区の住民の暮らしが成り立つ方策を優先してほしい」という願いにどう答えるのでしょうか。
土地区画整理事業が進められている西地区では、3割を超える世帯が転出し、残された住民も「こんなはずではなかった」との思いを強めています。人口減少が急速にすすむ中で、商売をしているところは予想外の苦労を強いられており、市の融資制度が新に創設されましたが、「借りても返済するメドがたたないので、利用できない」といった声が少なくありません。また「もう年だから、いったん外に出れば、2度とここには帰ってこれないのでは」という高齢者の声も切実です。
そもそも、駅西地区は「居住機能と生活文化創造機能をそなえ、新しい都市生活を創造する場」と位置付けられているわけですから、「都心・まちなか居住」を言うのであれば、東A地区ではなく、西地区でこそ生かされるべきです。急ぐべきは駅西地区で不安を抱えて暮らしている皆さんの願いに答えることに全力を尽くすことです。
5、 5つ目の問題として、今回事業提案競技に応募した2つのグループの提案を見て、改めて考えさせられたことでもありますが、駅周辺整備と東A地区再開発事業の関係、あるいは駅周辺整備と中心市街地活性化計画との関係について、整理しておく必要があるという点です。「ABILITY11」については数点の問題点を指摘しましたが、選定から漏れた三井不動産グループの提案をみても、3万平方メートルを超える大型商業施設を核施設にしていましたが、そんなことが現実に実行されれば、当該商業施設の経営が成り立たないだけでなく、中心市街地と食い合い、どちらも沈没することになりかねないことは誰が考えてもわかることです。それをぬけぬけと提案してきましたが、どれだけリサーチしたのか疑わしくなります。これは「副都心」という非現実的な構想に幻惑された典型例といえるものです。私どもは、これまでも「駅と駅周辺整備事業は東A地区も含めて、日本一乗り換え便利な駅にすることと、熊本らしい玄関口にすること、この2つが満たされれば十分であること」を提案してきましたが、その点をいっそう明確にすることが求められていることを痛感しています.
6、 最後に、6つ目の問題点ですが、そもそも市民合意により「熊本らしい」駅前づくりをめざすことを放棄して、中央資本に丸投げする方法を選択したことに根本的間違いがあったことを指摘せざるを得ません。全国ではじめての「事業提案競技」という方式による再開発ビル建設事業ということでしたが、応募する企業が中央大手資本しか選択肢に入らないというものであったために、地元密着型とはかけ離れたものとなってしまっています。わたしたち日本共産党は、潮谷知事と幸山市長に対して、これまで東A地区再開発を中心とする「駅周辺整備事業に関する提言」を2度にわたって文書(その1・・「森と水の都・くまもとの玄関口にふさわしく、県民市民の英知を結集して21世紀型の熊本駅に」、その2・・「過大な計画でなく、県民市民合意にもとづく現実的かつ魅力的な計画に」)で行い、議会においても繰り返し質問してまいりました。その核心のひとつは、「県民市民の合意形成が最も大事である」という点にあり、もうひとつは、「県民市民の英知を結集してこそ市民が誇りをもてる駅前のまちづくりができる」という点にありました。ところが、幸山市長は「新幹線開業に間に合わせなくては」といった強迫観念にかられたかのように、東A地区再開発事業を急いで推進してきました。市議会においてさえも、審議する場や方向がコロコロ変わったために、いまだに生煮えのままといって差し支えありません。ましてや市民的な合意という面から言えば、まだ論議が始まったばかりという段階といってよいでしょう。新しい熊本駅舎も駅前広場も完成は10年先と見込まれているのですから、その正面に当る東A地区においても同じスパンで考えて良いのではありませんか。あわてることはありません。じっくり住民合意の努力を重ね、熊本駅周辺整備で悔いを残さないようにすべきと存じますが、いかがお考えでしょうか。
以上の点について、4月5日ころまでに文書にてご回答いただきたいと存じます。よろしくお願いいたします。